日曜日, 11月 03, 2013

【芸能生活で支えにしてきた言葉  黒柳徹子】

 「芸能生活で支えにしてきた言葉」


         黒柳徹子(女優・ユニセフ親善大使)
 
               
              『致知』2013年10月号
               特集「一言よく人を生かす」より

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私にはあんまり、こうしたい、ああしたいと
いう野望はないんです。

いまここにあるものを、
どうすれば切りひらいていけるかという
考えで生きてきたので。


ただ、努力はしますよ。

俳優の渥美清さんは私の芝居を
よく見に来てくださったのですが、感想は


「お嬢さん、元気ですね。元気が一番」


といつもそうでした。

また長年指導していただいた
劇作家の飯沢匡(ただす)先生も、
台本をどう演じればよいかを伺うと


「元気におやりなさい。元気に」


とおっしゃった。


その頃は元気だけでいいのかなと思ったんですが、
いまとなれば、どんなに才能があっても、
結局、元気でなきゃダメなんだということが分かるんです。

「元気が一番」という渥美さんの言葉も
随分私の力になっていますが、
もう一つ仕事をしていく上で大事にしているのが、
マリア・カラスの言葉です。

二十世紀最高のオペラ歌手と謳われた彼女が


「オペラ歌手にとって一番必要なものはなんですか」


と聞かれた時に、こう答えたというんです。


「修練と勇気、あとはゴミ」と。



彼女は生前、四十ものオペラに出たんですが、
楽譜を見ると分かるように、
それぞれに物凄く細かい音がある。

しかし彼女はその全部に対して
「絶対にこれでなければダメだという音を、私は出してきた」
と言い切っている。要はそれくらいの修練をし、
身につけてきたということでしょう。

私は毎年一回、舞台をやるんですが、
その時にはやはりね、
「修練と勇気、あとはゴミ」と思いますよ。

そのためには一か月半の稽古をし、
二千行におよぶセリフを覚えなければならない。

だから皆と飲みに行くことも、
ご飯を食べに行くこともなく、
稽古場から家に帰って、
あとはずっとセリフを覚えたり勉強をしたりで、
全神経をそこに集中させていく。


もう一つ、これはイギリス人の方が教えてくれたのですが、


「ある人が飛躍して才能を発揮する時には、
 皆が寝ている時にその人は寝ていなかった」


という言葉があるんです。
つまり努力をしたということでしょう。
でも並の努力ではそこまでいきません。


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黒柳徹子さんと、
全盲ろうの東大教授・福島智氏による対談
「人生をひらく言葉の力」は、現在発行中の
『致知』10月号にてお読みいただけます。

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