火曜日, 2月 18, 2014

【誰よりも遠く・高!限りないジャンプの魅力に惚れて 葛西紀明】

一昨日、日本中が歓喜に沸きました。


ソチ五輪スキージャンプの
個人ラージヒル種目で
葛西紀明選手が銀メダルを獲得。


41歳でのメダル獲得は
冬季五輪日本勢で最年長の記録となりました。


7度目のオリンピック挑戦にして、
ようやく悲願を達成した葛西選手が
直後のインタビューで語ったこと。


それは、


「金メダルという次の目標に
 向かって頑張ります」


というものでした。


真のレジェンドを目指す葛西選手の
飽くなき挑戦心に迫る――。


┌────今日の注目の人───────┐



   「誰よりも遠く、高く!
  限りないジャンプの魅力に惚れて」
         

      葛西紀明
 (ソチ五輪スキージャンプ
  男子個人ラージヒル銀メダリスト)

     
 ※『致知』2005年8月号
   特集「彊めて息まず」より


└──────────────────┘


やはり心技体、どれか一つでも欠ければ
絶対に世界は取れません。


パーフェクトなものをつくって臨まなければ
金は取れないと思うのです。


だから僕は、1シーズン通して
全部完璧なジャンプで終わらせたい。


そうすれば、オリンピックでも
金メダルを取れると思うし、
世界選手権でもワールドカップでも優勝できる。


そのためにはどうすればいいかを
ずっと考えながら、
きょうまで20年以上厳しいトレーニングを
積んできたのです。


それでも、本当に完璧と思えるジャンプは、
これまでに2、3回しかないんです。


――あぁ、わずかに2、3回……。


子どもの頃は、ただ跳ぶことが楽しくて、
何も考えずに跳んでいました。


社会人になってからは、
たくさんのスランプも経験して、悩んで、
技術的にもいろんな模索をしてきましたが、


そういう中で子どもの頃のように
無心で自然なジャンプができれば、
完璧なジャンプに近づけると思うんです。


幸い、若い頃から血を吐くような練習を
ずっと続けてきましたから、
32歳のいまでも、体力の面では
世界トップレベルを維持できています。


むしろ少しずつ伸びてさえいます。


――それは驚異的なことですね。


精神的にも、年を重ねていく中で、
悔しいこと、辛いこと、
たくさんの修羅場をくぐり抜けてきて、
常に安定した状態を保てるようになりましたね。


さらに、4年前に移籍してきた土屋ホームが
全面的にバックアップしてくれていますから、
心置きなく練習に打ち込むことができます。


(中略)


僕は負けず嫌いだから、
とにかく練習していなければ
勝てないと思って、
これまでは休むことを知らなかった。


でも、それが逆に悪いリズムを
つくっていたんですね。


毎年2月になると
成績がガクッと落ちるんですよ。


コーチから、


「これはたぶん疲れだ。
 もっとリフレッシュしなければ
 本来の力を発揮できない」


と言われて、1月の試合の後、
次の世界選手権までの間に
必ず1、2週間休むようにしたんです。


最初は、こんなに休んで大丈夫かって不安でしたね。


しかし、そうして臨んだ2004年の世界選手権では、
ノーマルヒル、ラージヒルでともに銅、団体で銀と、
1度に3つのメダルを取ることができ、
ワールドカップでも最年長記録を塗り替えて
31歳と8か月で優勝を果たすことができたのです。


――悲運に見舞われても、勝利に恵まれなくても、
  ひたすら挑戦を続ける。ジャンプの魅力は何ですか。


ジャンプというのは特殊な競技で、
誰にもできるわけではありません。


自分の生身の体で跳んでいくこと。
危険の中で誰よりも遠く、高く跳んで勝つこと。


その喜びに、僕は惚れたんです。
これはもうやめられないですね。


――だからこそ「彊めて息まず」厳しい練習を
  続けてこられたのですね。


「彊めて息まず」。好きですね、そういう言葉は。
僕の好きな「継続は力なり」という言葉にも
通じるものでしょう。


その言葉に少しでも近づけるように、
僕はこれまで努力を続けてきました。


その間にいろんな不運にも見舞われましたが、
おかげで精神力、忍耐力もついて、
金メダルへの思いを途切らせずに
ここまでくることができました。


この言葉に着実に近づいてきた
という実感があります。

月曜日, 2月 10, 2014

【伸びる人と 伸びない人の差】

先日開幕し、連日熱いドラマが
繰り広げられているソチオリンピック。


今大会、最も金メダルを期待されている
注目選手の一人といえば、
フィギュアスケートの浅田真央選手でしょう。


浅田真央選手を育てたコーチ、
山田満知子さんが語った
「伸びる人と伸びない人の差」とは――。


┌────今日の注目の人───────┐



  「伸びる人と伸びない人の差」

         

 山田満知子(フィギュアスケートコーチ)
 

     
  ※『致知』2006年4月号
    特集「根を養う」より


└──────────────────┘


はっきりいって、
頭が悪いのはダメですね。
学校の勉強じゃないですよ。


1を言って10を知るじゃないけど、
コーチがいま何を考えているかとか、
きょうは何を練習したらいいかとか、
こちらが何も言わなくても
察することができる。


そういう勘がいい子が伸びますね。


私の場合、
チャンピオンにするとか、
メダリストにするとか、
実はそれほど興味がないんです。


うちに習いに来て、3しか能力がない子を
5とか7とかにすることはできても、
もともと10の才能を持っている
天才にはかなわない。


五輪に出てくる選手なんて
みんな天才ですよ。


その天才たちがさらに天才的に努力をして、
やっとメダルに手が届くかどうか。
そういう厳しい世界です。


世界の頂点に立てるのは
天才の中の超天才だけ。


たまたま(伊藤)みどりや
(浅田)真央はなれましたけど、
なれない人がほとんどなんですよ。


そりゃ私も2番より1番のほうがいいですよ。
でも、たとえ5番でも、みんなから


「あの子、いい子だったね」
「あの人の演技って素敵だったね」


と言われるスケーターがいいなと私は思います。


だってジャネット・リンだって3位ですよ。
誰も1位の人なんて覚えちゃいない(笑)。


彼女のスケートのいろいろなシーンに人間性が出て、
それがいつまでも私たちの心に残っているんです。


だから私はジャンプができないとか、
スピンが下手とか、そういうことではまず怒らない。


礼儀とか躾のほうが多いかな。
反抗期の時、生意気だったり、
先生にプンみたいな態度でいる子には
「ちょっと待ったぁ!」と。


「私はあなたより年上で、
 しかも先生でしょう。
 いまの受け答えはないでしょう」


とはっきり言います。
要するに生き方の注意のほうが多いですね。


みどりはハートの強さと優しさが混ざった
演技をするスケーターでしたし、
真央は素直で自然体の愛らしい演技をする子。


それってそのまま彼女たちの性格ですよ。
人間性が全部スケートに出ているんですね。